養子縁組を活用して行う節税対策と安易な縁組に対する注意点

節税対策として養子縁組を検討するケースも多々見られますが、煩雑な手続きがあるのではないか、養子では相続割合の不利益があるのではないかという誤解があるのも事実です。

ここでは、養子縁組をした時に得られる節税面でのメリットと、注意すべきポイントについてご説明します。

養子縁組の手続きと相続の関係性

養子縁組は比較的簡単に行うことができ、養子縁組届という書類を市町村役場に提出して行います。
養子となる人は必ず自分より年齢が下であることが条件で、届出書には親となる人と養子となる人双方の署名捺印が必要になります。

なお、未成年を養子に迎える場合は、家庭裁判所から認めてもらわなければなりません。

養子縁組は「親と子」の縁を結ぶための手続きですから、戸籍上の親子関係が生まれます。従って養子でも法定相続人となることができ、実子と同じ割合で財産を相続することができるようになります。

養子縁組の種類と節税メリット

養子を迎え法定相続人が増えれば、以下のように非課税枠が大きくなります。

基礎控除枠 3000万円+(600万円×養子を含めた法定相続人数)分
生命保険金の非課税枠 500万円×養子を含めた法定相続人数分
死亡退職金の非課税枠 500万円×養子を含めた法定相続人数分

養子縁組には2種類あり、双方の意思のもとに手続きを行う普通養子縁組と、家庭環境に問題等がある6歳未満の子に適用される特別養子縁組があります。
相続税対策に活用されるのは普通養子縁組の方になり、以下の条件を満たす場合に手続きできることになります。

  • 親となる人と子となる人の双方が合意していること
  • 未成年の子は家庭裁判所による許可があること
  • 親より子が年下であること
  • 必要書類を揃えて役所に提出すること

普通養子縁組を行った場合、子の親は実の両親と養親の計4名となり、それぞれの親に対する法定相続人となります。

なお、相続税対策だけを目的とした安易な養子縁組が行われないようにするため、相続税の控除に関わる養子の人数は、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいなければ養子2人までと決められています。

養子縁組を行い法定相続人が増えると生命保険等における非課税枠が増加する

生命保険等の非課税枠は、法定相続人の人数が多いほど金額が増加します。

生命保険の非課税枠 500万円×相続人数
死亡退職金 500万円×相続人数
相続税の基礎控除 3000万円+(600万×相続人数)

法定相続人数が増えれば非課税枠が増えて相続財産総額から大きく控除されるため、各相続人が受け継ぐ課税対象財産額も減ります。
結果として低い税率が適用され、相続税額を減らすことが可能となるのです。

こういったメリットの乱用を防ぐためにも、「実子がいる場合は養子1人まで、実施がいない場合は2人まで」というルールが設けられているのです。

養子が加わることで遺産分割協議がスムーズに運ばなくなる可能性も

相続税対策として考えれば、養子縁組制度は高い節税効果があることがわかりました。
しかし実際の養子縁組は家族関係や親類関係に大きな変化をもたらすため、相続人間でトラブルが起こったり遺産分割協議がスムーズに運ばなくなったりする可能性も出てきます。

実子にとっては、養子が加わることで自分の取り分が減ることにもなりますし、その感情は他の相続人も同じように抱くかも知れません。
相続する人全員がよく相談して、納得した状態で養子縁組を進め、できるだけスムーズに遺産分割協議を進められるよう配慮する必要があります。

節税対策として養子縁組を利用したい場合は税理士に相談を

養子縁組の手続きもその節税対策も、比較的自分で行いやすい作業であるとは言え、相続人の間では感情的なもつれが生じることもあります。
また、連れ子がいる状態で再婚した夫婦の場合、そのままでは連れ子に相続権がないため、養子縁組をして戸籍上の子とする必要もあります。

このように、養子制度を利用した節税対策には良い点と難しい点があるため、一度税理士に相談し、自分のケースではどのように進めるのが最善なのか、助言をもらうことを強くお勧めします。

当事務所では電話対応の時点から税理士が対応し、決して事務員任せにはしていません。
初回の電話相談でも、まずは全体像を教えてもらった上で一般的なアドバイスを行います。

ただし、デリケートなテーマについてはできるだけ会って話すことが必要であり、できる限り依頼者に寄り添った形でバックアップできるよう心がけています。

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