子を支えながら節税も可能な「教育資金の一括贈与」に関する基礎知識

大切な子や孫の成長を助ける上で教育資金は欠かすことができず、かつ大きな金額になるものです。
親や祖父母として経済的に支援しながら、節税対策としても非常に効果的であるため、子のためにお金を贈与する方法は今や一般的なものになりました。

ここでは、教育資金の一括贈与について、注意点を踏まえてご説明します。

一定の条件下で贈与する教育資金は1500万円まで非課税扱いとなる

子や孫の教育費にあたる金銭を贈与した場合は、1500万円まで非課税として認められます。
金額の大きさで非課税扱いが変化することはなく、入学や進学等の教育資金であれば該当するため、仮に学費として月に15万円を贈与した場合、10年間では、15万円×12ヶ月×10年間=1800万円のうち1500万円が非課税となります。

残る300万円だけが課税対象となるため、税金の心配を最小限に抑えた状態で財産を渡していくことができる仕組みとなっています。

一方、月々の贈与ではなく、教育資金として一括贈与した場合は、以下の要件を満たせば非課税措置が取られます。

  • 平成25年4月1日平成31年3月31日までの贈与である
  • 文部科学大臣が定める一定の教育資金である
  • 受贈者1人につき1500万円まで非課税
  • 贈与者は父母や祖父母等の直系尊属である
  • 受贈者の年齢は30歳未満
  • 信託銀行を通して「教育資金非課税申告書」を所轄税務署に提出する
  • 受贈者が教育資金の支払いのために贈与資金を引き出す時は、その領収証を金融機関に提出する

教育資金の用途は学業と習い事の二種類に限られている

学業に関わる支出は1500万円まで非課税となりますが、塾等の習い事については500万円が非課税上限となります。

学業に関わる資金は原則として学校等に直接支払うべき金銭である

学校とは、幼稚園や小中高校、特別支援学校、高専、大学、専門学校等を指しており、入学金、入園料、授業料、保育料、入学検定料等の他、学用品や給食費、修学旅行費のように学校教育に伴う費用が該当します。(インターナショナルスクールや海外の日本人学校も含まれます。)
これら学校施設において、各種費用を学校が直接徴収するものが学業に関わる資金として認められることになります。

塾や習い事教室に関する資金は非課税限度額が500万円である

学習塾や各種の習い事教室は私的に通うものであるため、その資金には非課税の限度額が決められています。
野球チームへの所属やピアノ教室の受講等は、教育と言うよりチームワークや教養を高めるためのものだと言えます。

この場合、月謝や用具代等を含めて上限500万円までを非課税としています。
なお、留学やその渡航費については認められるものの、滞在費等については対象外となっています。


学業から教養教室に至るまで、全て教育資金として考えてしまいがちですが、贈与税の視点では教育資金の範囲はかなり限られており、しかも境界線が若干曖昧なところがあります。
このため、教育資金の範囲について不安な時は、経験豊富な税理士に相談しながら贈与の手続きを進めることがとても大切です。

非課税適用条件の曖昧さや申請方法の複雑さがあるため税理士への相談が不可欠

教育資金の一括贈与を活用できれば、1500万円までの非課税措置を受けることができますが、そのためには普段馴染みのない信託銀行と取引を開始する必要があります。
信託銀行は一括贈与された金銭を管理し、贈与された子や孫が引き出す際に逐一確認を行う役目を負っています。

信託銀行と教育資金管理契約を締結した後は、金銭を引き出し使用できるのは贈与した子か孫のみとなります。
途中解約はできず、引き出しの度に使用用途を確認できる領収証を提出する必要がある等、その活用には手間もかかります。

馴染みのない契約を行い、面倒な手続きがあり、複雑な適用ルールがあるため、この制度の利用を考える際にはよく税理士と相談し、メリットとデメリットをしっかり理解する必要があります。

この先の子の将来計画をよく想像しながら、必要になる資金を想定することが大事です。
信託銀行との取引は解約できないことから考えても、実行の前には十分時間をかけて税理士と話し合い、専門的なアドバイスをもらうことが大切です。

節税対策としての養子縁組の仕組についても必ず税理士に相談を

相続税は法定相続人の数が増えるほど基礎控除額が増加し、その分、課税対象額が減る仕組みになっています。

法定相続人が3人いれば、基礎控除額は3000万円+(600万×3人)=4800万円となり、5人であれば基礎控除額は6000万円にも上ります。
この仕組みを利用し、養子縁組制度を活用するケースもよく見られます。これにより、相続税の基礎控除額だけではなく、生命保険金や死亡退職金についても非課税枠を広げることができるのです。

ただし、節税だけを目的とした安易な養子縁組は後のトラブルにも繋がりかねません。
現状をよく鑑みて、適切と思われる策の一つとして、生前贈与や養子縁組等を検討し実行していく必要があるのです。

このあたりは当事務所でもきちんとお話を伺い、背景事情等をしっかり理解した上で税理士が的確に助言を行うようにしていますので、子や孫に対する贈与についてお考えの場合はぜひ早めのご相談をお勧めいたします。

下記ページでは、養子縁組による節税方法についてもわかりやすく説明しております。

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