預貯金等の金融資産の調べ方と生前からの節税対策に関する考え方
自分が亡くなり相続が開始した時のことを想定して、持っている金融資産を確認し整理しておくことはとても大切です。
ここでは、預貯金や有価証券等の金融資産について、その確認方法と生前からの節税対策についてご説明します。
金融資産とは現金や預貯金、有価証券等の現金化できる財産
広く金融資産と呼ばれているものは、現金や預貯金、有価証券等の財産を指しています。
これらはすぐに現金として手元に置くことが可能であるため、納税に備えてある程度を確保しておく必要があります。
将来の相続税納税や節税対策を考えれば、生前から自分の財産や債務をきちんと整理し把握することが大変重要で、特に納税時に必要な現金が残るよう金融資産の確認は何よりも優先して行っておきたい作業となります。
預貯金は通帳探しに始まり銀行に残高証明書の発行を依頼するまでが一連の作業
亡くなった家族の預貯金を調べるためには、とにかく通帳を徹底的に探すことから始めなければなりません。
全ての通帳が揃ったら各銀行へ赴き、残高証明書の発行を依頼して正式な預貯金額を確認します。
全ての通帳が揃っているか不明な場合は、考え得る銀行を回り事情を話して口座の有無を確認するか、水道光熱費等の請求書から振替口座を辿り、該当する銀行に問い合わせることが必要になってきます。
ただし、本人不在の中でこれらの進めることは非常に困難であるため、本人はできるだけ生前から預貯金について一覧表を作成しておくか、通帳等を一カ所にまとめ家族に場所を伝えておくことも大事です。
株式等の有価証券は取引のあった証券会社に証券残高通知書の発行を依頼する
故人が株式等の有価証券を持っていた場合は、取引のあった証券会社に問い合わせて証券残高通知書を発行してもらいます。配当金があるようなら、通帳で配当収入も確認します。
これについても、家族が有価証券の存在すらわからない状態では探すのも困難ですから、金融資産の一覧に銘柄や価格、取引証券会社等について整理しておき、証書と一緒に保管しておくことが大切です。
いざ相続の開始が訪れた時に備えてリストの作成を行っておく
いざ自分が亡くなり相続の開始が訪れた時、肝心の自分はその場にいないことになります。
代わりに残された家族が自分の財産調査を行い相続税の申告納税まで行いますが、これも10カ月という期限内に完了しなければならず、その負担は非常に大きなものとなることが想定されます。
いざという時に備え、保有財産を一覧できるようリストの作成を行っておきましょう。
当事務所でも生前対策を強くお勧めしており、特に納税できるだけの現金をいかに揃えるかを重視しながら生前からの資産構成についてアドバイスしています。
相続財産を構成するものとして金融資産も確保しておかなければ、将来家族が納税できなくなる可能性があります。
例えば財産が株式だけ、不動産だけでは現金がないことになるため、納税の際に家族は非常に困ることになります。
ですから、相続税はどのぐらいかかるか大まかにシミュレーションを行い、保有資産の何割かを金融資産にしておき、必要なタイミングですぐに納税できるような資産構成にしておくことがとても重要なのです。
財産リストを作成し生前対策を行う際に確認及び検討する内容としては、以下が挙げられます。
- 生前段階での保有資産と相続税額のシミュレーション
- 現時点の現金や預貯金だけで将来の相続税分を確保できるかどうか
- 残された相続人だけでスムーズに遺産分割できそうか
- 換価して納税に充てられそうな資産はあるか
- 生前贈与や土地建物転用により節税対策できそうか
以上についても税理士とよく相談し方針を決めておくと、後々残された家族の負担は大幅に減り相続自体がスムーズに運ぶ助けとなります。
10カ月という限られた期間の中で相続税の納税まで完了しなければならないので、納税するための現金を予め用意しておくことができればベストです。
財産の申告漏れが後から見つかった場合は修正申告書で一からやり直しが必要
せっかく相続税にまつわる手続きを完了したと思っても、後から別の財産が見つかった場合は申告漏れとなります。
この時、一から財産調査や計算をやり直し、正しい内容と金額に基づいた修正申告書の提出が必要になってきます。
漏れがあるまま放置しておくと、後に税務調査が入り、延滞分に加え過少申告加算税というペナルティーを支払わなければなりません。
大きな二度手間と追徴金が発生することになるので、家族にとっては更なる負担増となります。このようなことにならないためにも、税理士の力を借りながら申告を進めることが非常に大事なのです。
生前対策としての遺言の必要性
遺産分割の割合を考えて遺言書を作れば、最大限の節税をすることが可能になるため、当事務所でも遺言書を作る際にはどの分け方が最もメリットがあるかアドバイスしています。
また、保持している不動産を、同居している子ではなく別居する子に相続させたい場合は、小規模宅地の特例が使えなくなるというケースもあるので、よく注意しながら依頼者の意思を反映させるように配慮しています。
いずれにしても、最終的に相続税がどれほどかかるかをしっかり見据えながら、慎重かつ適切なアドバイスを心がけています。
こういった生前対策は時間に余裕があるほど適切に進めることができるため、まだ本人が元気なうちに当事務所までご相談に来て頂けることが望ましいと言えます。
相続開始がいつになるかは誰にもわかりませんが、仮に10年の余裕があるとしたら、十分な相続税対策が可能となります。
まずはお気軽にご相談ください。