節税効果の高い貸家建付地を利用して相続財産評価を下げる時の注意点
アパート等の賃貸物件が建つ土地等を相続した場合、相続税評価には貸家建付地という分類が適用されます。
ここでは、一般的な土地評価に比べると評価額をかなり減額できる貸家建付地の仕組みと、利用の際の注意点についてご説明します。
土地建物を賃貸物件にすることで大幅な評価額減少が期待できる
亡くなった方が所有していた土地及び建物があり、賃貸物件として活用している場合、それらの土地建物を「貸家建付地」と言います。
都心部で賃貸マンション等の経営や部屋貸しをしている人は、節税できる可能性が高いと言えます。物件購入のために資金を借り入れた場合は債務として控除できますし、建物の評価はそのまま固定資産税評価額で計算されます。
都心部や繁華街にある物件は、取引価格と固定資産税評価額に大きな差が生じるため、例えば不動産売買に1〜2億かかったとしても、固定資産税評価額では3000〜4000万円として評価されるのです。
この差を利用して、大きな節税効果を得ることができます。
自用地、借地権割合、借家権割合を使った貸家建付地の計算方法
自用地とは宅地を貸していない状態の土地で、いわゆる更地となります。これに対して、土地にアパート等を建てて貸している場合は借家建付地と呼びます。
借家建付地の評価額は、国税庁による評価割合として公開されている借地権割合と借家権割合を使って算出します。
借家建付地の評価額を算出するには、まず自用地の評価額を路線価方式か倍率方式で出します。(参考:土地を評価する路線価方式と倍率方式とは)
さらに自用地の評価額に借地権割合と借家権割合をかけ、その合計をもとの評価額から差し引きます。
自用地としての評価額-(自用地として評価額×借地権割合×借家権割合)=借家建付地の評価額
自用地としての評価が5000万円で、借地権割合が70%、借家権割合が30%だった時、5000万円-(5000万円×0.7×0.3)=3950万円が借家建付地の評価額となります。
借地権割合と借家権割合の分だけ大きく減額されますが、これが貸家建付地の評価の仕組みなのです。
貸家建付地は、貸付事業用宅地として扱われ小規模宅地の特例を適用することが可能になりますが、その適用条件は人によりかなり細かく変わってくるため、税理士に相談の上、計算や手続きを進める必要があります。
賃貸不動産の遺産分割は相続人同士の衝突に注意
賃貸マンション等の不動産を複数の相続人で所有した場合、責任の分担や経営方針等において意思の統一が難しいという難点があります。
入居者との間に問題が起こった時の責任分担や、リフォーム等の実行における意思決定等、必ずしも全員の意見が一致するとは限りません。
そういったケースを含め、不動産相続におけるトラブルには以下のようなものが挙げられます。
- 不動産はすぐに換価できないため分割しにくい
- 相続人がすでに居住しているため売却処理ができない
- 金融資産と不動産をそれぞれ別個に相続すると、評価額に大きな差が生じる
- 不動産を共有名義の上で分割したら自分には価値の低い部分が当てられた
この中でも、すぐに現金化しにくく分割協議が難航しやすい点や、金融資産を相続した人と不動産相続した人では相続税に大きな差が生じる点は、のちのトラブルに発展しやすいと言えます。
このため不動産の絡む相続については、税理士の専門知識や経験によるアドバイスを積極的に受け、円滑に相続が完了するよう努めなければなりません。
借家建付地の相続はデリケートな問題だからこそ税理士に相談を
現金と違って不動産は簡単に分割ができず、相続税額にも大きな違いが出てくるため、相続人の間で争いにならないような遺産分割を進めることが非常に大切です。
また、納税用の現金を手元に残せるよう、当事務所では気をつけて助言を行うようにしています。
遺言にしても、遺産分割の割合を考えて作成すれば最大限の節税をすることは可能ですから、当事務所では遺言書を作る際にはどの分け方が最もメリットがあるかアドバイスしています。
不動産相続に関しても、同居する子供ではなく別居する子に相続させたいという場合、小規模宅地の特例が使えなくなるというケースもあるので、依頼者とよく話し合いながら慎重に計画を練っていきます。
いずれにしても、最終的な相続税額がどのぐらいになるのかということを見据えながら助言を行っています。
特に最近は、相続が原因で親族間争いになるケースが増えてきているため、誰がどの財産を相続するかというシミュレーションを生前にしっかりと行うことが重要です。そうすることで、無用な争いを避けなければなりません。
また、いざ納税する時に不動産だけしか遺産がないようなケースだと納税できないので、必要な現金が手元に残る資産構成をしっかり組めるようプランニングのお手伝いを行っています。
このあたりは税理士の経験の差が出てくる部分でもあるので、33年の豊富な実務経験を持つ当事務所の税理士に一度ご相談ください。