相続税の納付は分割でもできる?延納の方法と利子について
ちょっとした買い物なら一括で支払えますが、まとまった額になると大変です。車や家など高額商品を買うときには、多くの人が一括払いではなく分割払いを選択します。税金も同じです。一般の税金に比べ高額な相続税は、一括払いが難しいことがあるため、延納(えんのう)という分割払いの制度が設けられています。では、いったいどのような時に、どのような条件で延納を利用することができるのでしょうか。
相続税の納税は10ヶ月以内に原則一括で払わなければならない
相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。相続人は、被相続人が亡くなったことを知ったら10ヶ月以内に相続財産を把握し、申告の書類を作り、添付書類も準備します。
相続税の添付書類は、様々なものが必要です。主なものを、以下にあげてみます。
相続税申告に必要となる主な添付書類(身分関係証明)
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の略歴書
- 申告人全員の戸籍謄本(相続放棄した人を含む)
- 相続放棄・限定承認をした人がいる場合は、申述の証明書
- 被相続人と申告人の関係図
- 申告人全員の印鑑証明書
- 遺言書があれば遺言書の写し
- 遺言書の検認を受けた場合は検認の証明書
- 申告書提出までに遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割協議書の写し
- 相続人に未成年者がいる場合は特別代理人の選任申立書
身分関係の確認だけでなく、遺産に関する財産価値を示す書類も必要になります。遺産に土地があれば、登記簿謄本、土地の明細・実測図、固定資産税評価証明書、地積測量図または公図の写し、などが必要です。家屋についても、登記簿謄本、家屋の明細・建築図、固定資産税評価証明書、などが必要になります。賃貸契約がある場合、賃貸契約書も必要です。預貯金、株式、借入金、などについても、確認書類が必要になります。
相続税の支払いも10ヶ月以内に行う必要がある
申告には、財産の内容によって異なる多くの添付書類が必要です。それだけでも大変ですが、相続税の申告期限までに、相続税も支払う必要があります。相続税は、期限である10ヶ月以内に、全額を現金で納付するのが原則です。相続財産に現金がほとんどなく、不動産を相続したような場合、多額な税額に対し納税資金が不足することも考えられます。
納税が遅れると延滞税を支払うことに
納付期限までに相続税を支払わないと、「延滞税」が課されてしまいます。平成30年の延滞税は、納付期限の翌日から2ヶ月以内は年2.6%、その後年8.9%です。なお、延滞税率は、国内銀行の貸出約定金利により変化するので、年度によって変化します。
要件を満たせば分割(延納)も可能
相続税が10万円を超え一括では納付できない、というような場合申請すれば、税額を分割して毎年一定額ずつ支払う「年賦」が認められる可能性があります。これが、相続税の延納(えんのう)という制度です。ただ、何でも認められるわけでなく、正当な事由や担保の提供、といった要件を満たさなくてはいけません。また、延納期間中は利子税の納付が必要となります。延納申請できる要件は、次のようになります。
相続税の延納が認められる要件
- 相続税額が10万円を超える
- 金銭で納付することを困難とする事由がある
- 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
※ただし、延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合は担保不要 - 延納申請期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出
延納できる金額
延納は、あくまで特例ですから「金銭で納付することを困難とする金額」についてのみ認められます。延納が許可される納付困難な金額については、次のように計算をします。
延納の許可限度額 = 納付すべき相続税額 - (あ)の額 |
※(あ)の額は、納付期限に金銭で納付することが可能、と税務署が判断する額です。現金納付額と呼ばれ、期限までに現金で納税しなければいけません。
(あ)の額の計算方法ですが、(A:納税義務者が納期限において有する現金、預貯金その他換金容易な財産の額)から(B:本人と本人の配偶者などの親族の生活のために通常要する費用の3ヶ月分相当額)と(C:納税者が事業の継続のため当面必要な運転資金の額)を差し引いたものとなります。
(あ)=A-B-C
延納に必要な手続
相続税を延納したい場合、相続税の納付期限までに「延納の許可申請」を行う必要があります。このとき、「担保として提供」するものについての書類も、一緒に提出をします。延納申請書の提出期限をすぎると、申請しても却下されてしまうので気をつけてください。
担保提供関係の書類は、そろえるまでに時間がかかることもあります。そのため、期限までに担保提供関係の書類を提出できない場合、延長届出書を提出すれば、1回につき3ヶ月を限度として、最長6ヶ月まで期限を延長できます。この提出期限までに担保提供関係書類の提出ができなければ、延納申請自体が却下されます。
延納申請がされると、要件に該当するかどうか税務署が調査し、原則3ヵ月以内に許可または、却下の判断がされます。許可された場合の延納期間は、不動産等が相続財産に占める割合により、5年~20年間となっています。
延納の許可申請
延納申請時に提出する書類は、次のようになります。
- 延納申請書
- 金銭納付を困難とする理由書(説明資料も添付)などの申請書
- 担保提供関係書類
担保として提供できるもの
換金性が高く、務署長許可したものが担保として認められ、適当でないと判断されれば変更を求められます。担保として提供できるものは、次のようなものです。
- 国債
- 地方債
- 税務署長が確実と認めた社債などの有価証券
- 土地
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
延納した場合は利子税がかかる
申請すると6ヶ月以内に許可または却下される
延納を申請すると、基本的には申請期限から3か月以内に許可又は却下が通知されます。ただし、延納担保などの状況によっては、最長で6か月まで許可の判断が延長される場合があります。
利子税
延納を行っている間は、分割で支払っている相続税に加えて、利子税を支払う必要があります。利子税の割合は、どんな財産に対する相続税かと、不動産等の割合がどれだけであるかによって決まります。例えば、相続税の対象となる財産のうち不動産等の割合が50%以上の場合、動産等に係る延納相続税額に対しては、5.4%の利子税が必要です。
ただ、低金利が続く時代には特例割合により計算されるため、平成30年の場合、1.1%となっています。不動産等に係る延納相続税額についても、基本の利子税は3.6%のところ、平成30年の特例割合では0.7%となっています。不動産等の割合が50%未満の場合、一般の延納利子税割合は6.0%、平成30年の特例割合では1.3%となっています。
相続税の額でお悩みなら専門家に相談を
状況に応じて相続発生後でも可能な節税方法がある場合もございます。まずはご自身の状況を専門家に相談してみることをお勧めします。
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