相続税申告で税務調査が!流れとペナルティについて
平成29年12月の国税庁発表 によると、平成28年中に死亡した約131万人のうち、約10万6千人が、相続税の課税対象となりました。このうち、12,116件について税務調査 が実施され、9,930件で申告漏れなどが見つかりました。相続税課税対象者の1割強に税務調査が入り、調査の入った82%で申告漏れが指摘されたのです。
相続税を申告する立場になったとき、税務調査は決して人ごとではないということを覚えておいてください。
税務調査とは、税務署が財産内容の漏れや誤りの有無を調査しにくること
税務調査とは、申告漏れがあるのではないかと判断した事案や、申告義務があるのに無申告ではないかと思われる事案について調査することです。
税務調査が行われるのは、相続税に限りません。ですが、他の税金に比べ税額が大きく、申告方法を間違えやすい相続税は、税務調査の入りやすい分野です。もちろん、故意に申告漏れや脱税を行うのは許されません。しかし、相続税では、悪意はなくともうっかりミスが起こりがちです。
被相続人の全財産をしっかりチェック!
相続人が相続税を正しく申告するには、亡くなった方の全財産を把握しなければなりません。ただ、たとえ親子や夫婦でも、生前全ての財産を把握していることは希です。そのため、親が土地を購入していることを知らなかったり、実際は相続財産にいれるべき、夫が購入し名義だけ妻のものにしていた有価証券を見逃していたり、といったことがよくあります。
こうしたミスを防止するために、相続税の申告書と一緒に、チェックシートが税務署から手渡されます。4ページにわたるシートを利用すれば、見落としがちな事例を細かくチェックすることができます。一つ一つ確認しながら、間違えないようチェックを進めてきましょう。
このチェックシートは国税庁ホームページからDLすることも可能です。(参考リンク:相続税の申告のためのチェックシート|国税庁)
こうしたチェックを行い申告しても、平成28年度の申告漏れは全体で3,295億円にのぼりました。税務調査された1件当たりの額にすると、2,720万円です 。申告漏れがあった財産額では、現金・預貯金等が最も多く、1,070億円。有価証券535億円、土地383億円などの申告漏がそれに続きました。
海外預金口座の過少申告も見抜かれる
過少申告や無申告の事例として、海外預金口座ならわからないだろう、と申告をしないケースがあります。一部の納税者の間では、資産を海外で運用し節税を目指す動きもあります。もちろん、正しい節税なら問題はありません。ただ、税の適正な課税を実現するため、国税庁も租税の国際化に対応しています。
ある相続人は、被相続人の海外預金口座を申告せず、相続開始後に自分の名義に変更をし、過去の取引書類もすべて処分しておきました。それにもかかわらず、国税庁に過少申告が見破られてしまいました。その理由は、租税条約にあります。
二重課税の調整や脱税防止等を目的に、日本は海外の国々と租税条約等を結んでおり、情報交換を行っています。この条約に基づき、海外口座のある現地税務当局が、利子や配当金の受取のさいの課税情報などを、国税庁に情報提供しているのです。
また、国税庁が金融口座などの情報収集を要請することもできます。これらの情報をもとに、国税庁は日本人の海外口座など、海外資産の把握を行っているのです。税務署では、これら各種の資料から海外資産の相続が想定される場合、積極的に調査を実施する旨を明言しています。
申告漏れや誤りがあるとペナルティがある
申告漏れや誤りによる過少申告が発覚した場合、金銭的なペナルティが科せられます。
過少申告加算税
悪意はなくとも、計算違いや評価の誤りなどで、相続税を少なく申告してしまった場合、過少申告加算税が課せられます。その額は、不足税額の10%相当です。期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%の過少申告加算税が課せられます。
申告を行わなかった場合
税務署が保有する情報から、相続税が無申告と思われる相続人等に対し、税務署から「○○のお尋ね」というハガキが届くことがあります。これは、相続人が自発的に申告書を提出するよう促す目的で、税務署が行っている取組です。
書面を受け取ったら、すぐに申告を行いましょう。相続税の告義務があるだろうと思われるのに無申告のままだと、税務署が調査し税額を決定します。
無申告とみなされると、納税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の加算税が課せられます。過去5年内に、無申告加算税(更正・決定予知によるものに限る)又は重加算税を課されたことがあるときは、さらに10%加算されます。
重加算税が課せられる場合
隠蔽や仮装があり悪質とみなされると、申告書を提出していたら35%、提出していないと40%の重加算税が課せられます。平成28年度の場合、相続税の申告漏れと認定された案件のうち13.1%が悪質と判断され、重加算税が課せられています。
延滞税
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされています。この申告期限を2ヶ月経過すると、14.6%の延滞税も加算されます、
税務調査の流れ
相続税の申告書が税務署に提出されて、すぐに税務調査に着手するのはよほど特別な場合だけです。まずは、税務調査を行うべき対象か否か、申告審理と呼ばれる審理を行います。
税務署は、KSKシステム(国税総合管理システム)などを活用して、故人の生前の収入や所有財産などを把握します。それらのデーターから1年間にどれくらい財産が貯蓄できるか想定した額と、提出された申告書の額を比べ、正しい申告がされているかを判断します。
死亡した故人の財産だけでなく、妻や子供などの名義の預貯金や持ち株なども調査の対象です。収入に比べ、申告財産が極端に少なければ、調査の対象となる可能性が高まります。
申告漏れが想定される事案と判断されると、順次調査が行われていきます。
税務署の調査は任意調査
税務署の調査は、故人が生前住んでいた家や相続人の家に、関係者を集めて行われます。国税庁の査察調査とは異なり、任意調査ですから、相続人の了解なく家の中を捜索するようなことはできません。
しかし、税務署はかなりの確信を持って調査にやってきています。やましいところがないのなら、素直に調査に協力するのが得策です。下手に隠し立てすると、隠蔽工作を行ったと認定され、重加算税を課されてしまいます。
申告期限から5年を経過すれば税務調査の心配はほぼ無い
相続税の税務調査は、申告書を提出後、1~2年してから行われることが多いといわれています。申告内容と税務署のもつデーターを照らし合わせ、検討すること考えると、その程度時間が必要です。
では、いったいいつまで、税務調査が行われるのでしょうか。相続税の時効は5年のため、5年を過ぎると税の徴収ができなくなります。そのため、5年を過ぎると基本的に税務調査の心配はありません。ただし、悪質な脱税の場合、7年前まで遡って課税される可能性があります。
このような事態を避けるためにも、決してミスのない申告を行えるよう相続税の申告は専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では無料相談も行っております。まずは早い段階で、渋谷の相続税申告に強い当事務所までご相談ください。